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【リリカルなのは】ユーノ司書長はカワイイ156【無限書庫】
- 67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2018/05/09(水) 12:00:55.55 ID:+nIxCMzr0.net
- 自分の中にある力の源が空になったのだと理解し、彼は悔しげに唇を噛む。
ここまでなのか、と。情けない想いに駆られた彼に引導を渡さんと影が迫る。
あと数メートルで、少年に死が降りかかる。
そうして、目前の死を感じ取ったその時―――
鼻先まで迫ろうとしていた影を裂く、雷光の一閃を目撃した。
「な―――」
少年は、唐突に訪れた助けに呆然とするよりも、目の前で起こった出来事の方に驚愕した。
が、何がどうなったのかと考える暇も無く、驚きに呑まれ掛けている彼を他所に黒衣の少女がその場に降り立つ。
他に人影がないところを見ると、どうやら彼女がさっきの雷光を放ったのだろうことはわかる。
しかし、あれほどの攻撃を放ったのが自分と同い年くらいの女の子だという事実に少年はますます困惑してしまい、礼も疑問も口に出せない。
そんな彼の困惑をよそに、少女は今しがた斬り裂いた影のいた辺りを見ている。何となく取り残された様な気がして、少年は自分の置かれた状況がえらく他人事の様に思えて仕方がない。
けれど、引き離された様な感覚は次の瞬間搔き消える。
「ロストロギア、『ジュエルシード』。シリアル21―――封印」
《Capture.》
抑揚の薄い、透き通る様な声で封印処理を施す少女。
金色の宝石のはめ込まれた黒い斧で『種』に触れ、その中に収納する。
その、あまりにも感情の覗かない自然な行為は、逆に不自然さを少年に感じさせた。
何故、『ジュエルシード』のことを知っているのか。
可能性はいくつもある。だが、ここは自分たちの世界からは遠く離れている場所。
だというのに、どうしてこんなところに『魔導師』がいるのか。
少年の脳裏には、ここへ来る前に受けた説明が浮かぶ。
ここへ先行する前、少年は自分たちの世界を維持している司法組織にこの『種』の捜索を依頼した。しかし、依頼は受理されたものの、実際に出向くのは少し時間が掛かるという話だった。
なら、こんなところで単独で動く『魔導師』がいる可能性は低い。
そもそも『管理局』なら、『管理外世界』にいる自分の身元を確認して来ても不思議はない。
が、少女は此方に何も言ってこない。
いったい、何者なのか―――
「―――君、は……?」
思わず問うと、漸く彼女は少年の方を向いた。
向けられた瞳は紅で、彼よりも明るい金色の髪を二つ結びにし、黒いマントを纏った出で立ちは夜の闇によく映える。
見惚れてしまいそうな美しさを持っているが、今はとにかく聞いて置かなければならないことがある。
「君は、いったい……」
誰? と。
そう訊ねた彼に対し。
少女はほんの少し顔を俯かせ、何かを逡巡するように間を開けてから短くこう応えた。
「―――フェイト。
フェイト・テスタロッサ」
始まりの日。
本来とは違う路を経て、翡翠と雷光が交わる物語が始まった。
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