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ドストエフスキーPart49

989 :吾輩は名無しである:2020/02/10(月) 21:57:11.15 ID:Vakn8KUo.net
 それは晴れやかな輝かしい日であった。参詣の巡礼者は多く墓の周りに群がってい
た。墓はおもに本堂の周囲にかたまっていたが、また庵庭の諸所に散在しているのも
あった。庵室を巡っているうちにパイーシイ神父は、ふとアリョーシャのことを思い出
した。もう大分前から、ほとんど夜の明けぬうちからこの青年の姿を見受けなかった
のである。このことを考えつくと同時に、彼は庵庭の片隅なる塀の傍らに青年の姿を
発見した。アリョーシャは大分昔にこの世を去った、いろいろな苦行によって名を知ら
れている、一人の僧侶の墓石の上に腰かけていた。彼は庵室を背にして、塀の方へ
顔を向けながら、墓標に姿を隠すようにして座っていた。そのそばへ近々と歩み寄っ
たパイーシイ神父は、彼が両手で顔を蔽いながら、声こそ立ててはいないが、全身を
震わせつつ苦い涙にむせんでいるのに気がついた。主教はしばらくそのそばにじっと
立っていた。

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