【信濃毎日新聞社説】刑法の強姦罪が成立するのは１３歳未満の場合だ、青少年条例を県会で問題点ただせ

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いくつもの異論が出ているのに何も反映しない。これでは何のために県民対象の意見交換や意見募集をしたのか。形だけだったといわれても仕方がない。

県がきのう、１８歳未満との性行為を処罰する規定のある条例案を決めた。１６日に開会する県会に提出する。

県は２月に条例の骨子案を発表し、意見募集などをした。条例案は、県の責務として「県民運動を尊重し、積極的に推進する」など当然のことを追加しただけで、ほとんど内容を変えなかった。疑問は解消されないままだ。

条例案の最大の問題点は性行為の規制のあり方だ。

「大人の責任」として、真摯（しんし）な恋愛を除き、判断能力が未熟な１８歳未満に対し、性行為などを行うことは許されない―としている。

「真摯な恋愛」とは何か。真剣さという心の問題を条例で縛ることは憲法が保障する内心の自由を侵すのではないか。「訓示規定」とはいえ、行政が心のありようを示すことの危険性は戦前の歴史が教えている。

改正公職選挙法が今月１９日に施行され、選挙権年齢は１８歳以上に引き下げられる。その手前の年齢までひっくるめて「判断能力が未熟」と決めつけることにも違和感がある。

１８歳未満に対し、威迫や欺き、困惑によって性行為などをした場合、２年以下の懲役または１００万円以下の罰金という罰則も骨子案から変わらなかった。困惑などは恋愛でもありうる。曖昧な規定で捜査機関の裁量を広げる。こうした懸念は置き去りにされた。

刑罰は本来、法律によって定めるものだ。規定の処罰対象を自治体が条例で広げることが妥当なのか。根本的な議論を欠いている。

例えば、刑法の強姦（ごうかん）罪は処罰対象を暴行や脅迫を用いた性行為に限定している。暴行や脅迫がなくても強姦罪が成立するのは相手が１３歳未満の場合だ。

これを超えて性行為に公権力が踏み込むことを法が制限していると解釈される。その制限を条例で緩める危うさを県はどこまで認識しているのか。
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160611/KT160610ETI090014000.php