2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

世界一上手いカリスマアニメーター井上俊之の本人コメンタリーで気になった発言をピックアップしていくスレ

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:06:43.525 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

走るキャラとカメラを並走させたかったから付けPANじゃなくてフォローにしキャラがカメラを追い越してからは並走しつつPANで見送った
普通こういう場合は付けPANにしがちだが観客の視点とカメラの動きを同調させてキャラと一緒に観客も一緒に走ってる気分でこの作品に入り込んでほしかった 
フォローの時の雲の速い流れはアニメ的な嘘でそのあとのPANの時の雲の速さとごちゃまぜにしたハイブリッドかつご都合主義的な手法
観客に気付かれないように欲しいビジュアルを作っていくことが大事
沖浦啓之であれば何が何でも理論的に整合性を取ろうとするが自分は都合よく嘘をつきたい
沖浦は理屈に合わないことをやりたくない人間なのでこのカットを沖浦が描けばスタートのフォローは遅くするはずだが自分は疾走感が欲しかったから速いスピードで雲を引いた
理屈最優先でない方がむしろいいと思っているしほどよく理論は裏打ちとして欲しいがそこに固執して結果的に欲しい画面から遠ざかるのは良くない

2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:09:00.668 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

布を持っての落下シーンで画面左上に一瞬だけたなびく布をインさせたのはアニメ的な嘘だがそのほうが画面が賑やかになるし「ばさばさっ」という効果音が付くだろうことを想定してそうした
アニメの利点はいかようにも出来ることなので「うっそだー」とならない範囲でどんどんやりたい
ナウシカでユパ様が飛行艇の中に入っていく時の「ばさばさばさっ」という布がたなびく感じのアニメ的な気持ちよさをイメージした(つづく)

3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:09:57.218 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

泉に入ったキャラの立ち泳ぎで肩が全部出るほど浮いているが実際には淡水のはずなので水は顎に付くはず
しかしセリフもあるしアップアップさせるわけにもいかないからほどよく嘘をついて見やすさを優先した
リアリストで嘘が付けない沖浦なら顎に水を付ける作画をしたはず
水の波紋の描き方もアニメ的な嘘で実際には面的に変化していくのでくっきりとした波紋状にはならない
テレコムで宮崎駿さんたちがやっていたセルアニメの表現がキャラとの親和性がちょうどよい
キャラが奥へ移動するときに波紋が付いて行く表現はこだわった
大きいものが移動したときの水流の変化はリアリズムの手法を持ち込んだ
これは幼少期に祖父母の田舎である丹後で毎年2週間くらい海で泳いでいた時の経験をもとにして描いた
海に浸かった時の感じや水の抵抗感や波打ち際の水圧の怖さは体感として今でもよく覚えている(つづく)

4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:11:18.264 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

ベタな水面でもレイアウトにはパース線はきっちり描いておく
上から見ているキャラの視線なのでポン寄りの望遠風にしたが完全な望遠ではない
望遠至上主義の人もいるが自分は望遠をアニメーションに持ち込みたくない
望遠はレンズの見た目なので描き手であるアニメーターは体感としては持っていない
人間は望遠の世界観には生きていない
10メートル離れたキャラを100ミリ以上のレンズで寄るようなのは演出的意図がない限りは普通はない
カリオストロの城のオープニングで車がスライドで移動する望遠カットのような象徴的なカット以外はアニメーションでは望遠はやらないほうがいい
望遠は上手く描いたとしても奇妙に見えてしまう
若手は広角レンズで描きがちだし達成感を得やすいが結果的に珍妙なものになっている
自分は異常な広角レンズや望遠レンズは描かないようにしている

5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:13:50.274 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

竜が暴走するカットは絵コンテの内容に無理があったので悩んだ
コンテは3Dフォローの指示だったがこれを変更してTBとした
原画の仕事は絵コンテの再現ではなく表現すべき内容をより効果的かつ効率的に実現すること
今の若手だと3Dフォローで頑張って描くだろうが自分はそこまで労力をかける必要はないと判断した
3D背動でとらえることが目的化するのは違う
竜のスタート位置がカメラから遠いので3D背動は意味がない
やるのであれば最初からカメラが竜に近くなければならない
竜から逃げ惑うモブの中のコケる演技はサッカー選手が反則を取るためにワザとらしくコケる演技を参考にした
主役でなければあざとくコケて目を引く演技をさせるのもアリ
大変なカットは自分も楽しまないと損なので楽しい要素を盛り込む
若い人は楽しくなりすぎて本末転倒な作画となることが多い
あくまで描いている自分がほどほどに楽しくなるくらいのアイディアがあるといい
それがアニメーションをやるうえでのコツ(つづく)

6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:15:07.383 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

竜が落下してくるカットは絵コンテに無かった瓦礫の落下や水が押し寄せる描写を足した
コンテに指示がなくてもリアリティや臨場感を上げるための工夫は時間の許す限りするべき
理屈で考えれば竜と瓦礫は同時に落下するはずだが最初に瓦礫を落として一拍置いて竜を落下させることで怖さと見ごたえを強調した
見る人がそこに同席できるような臨場感を表現するためには嘘も必要(つづく)

7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:16:00.883 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

もう少し尺があれば自分のやりたい表現が出来たとしても自分はそこまでわがままじゃないので尺に収める方を優先する
他のアニメーターはコンテ尺通りに描くか少し伸ばすかするが自分は短くて済むと判断すればコンテ尺よりも大胆に短く描く
この作品では短期間で400カットを描かなければならなかったので伸ばして描くのはそもそもあり得なかった(つづく)

8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:16:46.474 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

ヤン・デ・ボン監督の『ツイスター』では竜巻に飛ばされた牛が画面一杯に迫ってくるカットがあるが実写でそれをやると都合が良すぎる感じがして鼻じらむがアニメだと気にならない(つづく)

9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:17:14.179 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

竜のしっぽに弾き飛ばされた1人の見物客が水に落ちるカットはいくらなんでも水しぶき大きすぎるだろ爆発かよというくらいに誇張して描いた
しょぼく水柱が上がってもしょーもないのでワザと派手にした
このシーンは音楽も派手であろうと考えて派手な印象を残したかった
本当であればポチョンと落ちてバシャっと上がる感じだと思うが近くの舟に盛大に水がかかるくらいの水しぶきにした
理屈はどーでもよくて多分観客も勢いで見てしまうだろうと思った
揺れる舟はスライドや引き写しにはできなかったので地味に大変だった(つづく)

10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:18:08.207 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

竜の羽ばたきは『ヒックとドラゴン』が素晴らしいので研究したかったがその時間的余裕がなくて断念した
他のアニメーターの描く羽ばたきはどれも上手くいっていないしそもそもタイミングが違う
よくある間違いでは振り降ろすときに速くて上げるときにゆっくりにするというのがあるがこれは実際には逆
翼を振り下ろすときには空気を孕んで抵抗感があるのでゆっくりになり上げるときには空気抵抗を減らすために早く上げる
「バサッバサッ」と速く振り下ろすのは間違いで「わぁさっわぁさっ」とゆっくり振り下ろすのが正しい
竜のデザインは飛ばすには翼が小さすぎるし手足が太くて飛べるように描くのは大変だった上に肘の突起が邪魔だった
結果的に設定よりも翼を大きめに描いた
車が前進するときに土煙が後方に出るのは間違い
重たく速いものが通過するときには無風であればそれの対流によって土煙は進行方向に引っ張られる
FIXの場合にはそうなるがフォローの場合には後ろに流れるように見える
着地をする際の竜の土煙もそれと同様に考える
それと同時に竜のはばたきの風圧の影響を受ける土煙の動きも考える
臨場感のためにこういった物理法則は大事にしたい
エフェクトは自然現象だから不自然では困る

11 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:20:17.953 ID:fYfdsnEd0.net
アニメーター志望で尊敬してるけど最近ツイッターで左翼発言するから悲しい

12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:20:55.913 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

他のアニメーターは波のウェーブの動きがちゃんと描けていない
FIXの場面なのに波頭を送るのは間違いで波動だから波自体はそこに留まる
波動の動きが順番に伝わっていくように描くべきだが何故みんな上手く描けないのか不思議
みんな海に行って浮かんでみれば分かる
宮崎駿さんも言っていたが他のアニメーターはそういった体感の経験が少ないから間違った絵を描くのではないか
映像で見ただけではそういった実感は身に付かないし経験しないと観察力が生れない

13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:21:00.676 ID:fYfdsnEd0.net
これさよ朝のコメンタリーか

14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:22:05.502 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

炎は大きさによるフォルムや動きの問題に加え周囲の明るさによる明度と色味の問題がある
床に落ちたランプから油が漏れ炎が立ち上るカットは油なので燃え始めは青色となる
研究する時間がなかったので印象だけで描いた
リアリズムでやるとまどろっこしい動きになるが数秒で簡単に済ませることができるのがアニメーションの良さ
これは服を脱いだり着たりするのも同じで実際には何十秒もかかる段取りがあるがアニメだと「さっさっ」と済ますことができる
炎の作画の基本はアウトラインしかないと言っていい
アウトラインの動きが失敗すれば内部の動きを頑張っても失敗にしか見えない
炎の内部の動きは補足的なもので塗分けを上に送った
ルパン最終回の宮崎駿の描く炎の塗分けがめちゃくちゃ上手くいっていて自分の炎の作画の手本にしている
撮影処理をせず2色の塗分けだけでメラメラした感じが出てる
炎は実写を研究しても複雑すぎてセルには落とし込めないので
上手いアニメーターの描いた炎のエフェクトから学ぶほうがいい
だがそうはいっても本物の炎の印象からは離れてはいけない
『わんぱく王子の大蛇退治』の月岡貞夫さんや大塚康生さんの炎の作画は気持ちいい
宮崎駿さんが『どうぶつ宝島』で描いた炎も気持ちがいい
自分のベースはこの辺にある
若手アニメーターは古典過ぎて観ていない人も多いから温故知新ではないがセル画における炎の表現のほど良さを学ぶためにもぜひ観るべき
これをとっかかりにしてそこに写実的な要素を盛り込むくらいの取り組み方でやらないと入口が大平晋也君や橋本晋治君の炎ではつかみどころがなさ過ぎて参考にならない
『太陽の王子 ホルスの大冒険』で小田部洋一さんが描いた船を燃やした時の炎や『どうぶつ宝島』の炎は真似しやすいので若手アニメーターにも薦めたい
実は水や炎の表現は『どうぶつ宝島』から誰も抜け出せていない

15 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:27:10.808 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

ユラ影と水中の動きはどちらも水面の状態に影響されるが写り込みの方がより強く影響される
ユラ影の写り込み方を間違って描いているアニメーターが多い
ユラ影は反射なので水面の角度が1度違えば反射部分はその倍影響される
水深が深いとユラ影の影響は大きく水深が浅いと少ない
膝下くらいの水深からは劇的にユラ影が伸縮する
水中部分も水深が深いほど屈折率は高くなる
ユラ影はボヨヨヨヨ〜ンと上手く描けると気持ちがいい
ユラ影と影がごっちゃになっているアニメーターが多い 
透明度の高い水は透過するので水面ではなく水底に影が写りこの影は反射ではないのでユラユラしない
水面が濁っていれば水面にも影が落ちる
水底に落ちた影の上にはスーパーが乗る
勘違いしているアニメーターがいるがスーパー用のマスクにしてキャラの影の部分にスーパーを乗せないようにする人がいるがそれは間違い 
波紋は角度が変化して空の写り込みの向きが変わるからそこは写さないという意味のアニメ的な表現
そもそも「ユラ影」という言い方は影じゃないので用語としておかしい
ユラ影というのは影ではなく写り込み
こういうことを考えながら描くのはわくわくするし上手くできたときには快感がある
エフェクトは原理が分かってそれを原画でどう描けばいいかが分かってくると楽しくなってくる

16 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:31:20.390 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

走りと歩きにおけるスカートの動きは丈や素材の柔らかさや生地の厚さ等によって全く違う
このキャラの場合は素材は薄手で柔らかいので足にまとわりつくはずと考えた
それだけではつまらないので脚を前に出す直前に多少ふわりと膨らんだ絵も入れた
横よりも縦の構図の走りのほうが難易度が高く前に出した脚に付いて行く布は膝によって引っ張られる形の皺や影を付けることで表現した

17 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:35:37.923 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

長い髪は走ったときに左右には揺れない
ポニーテールは歩いただけでもビックリするくらい左右に揺れる
鞄に付けたマスコットも歩いただけでもの凄い揺れる
馬の尻尾は実はたなびく動きになる
アニメーションで上手く表現できていない現象は日常の周りにいっぱいあるので普段から注意して見ることで新しい課題が見つかって面白い

18 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:36:19.697 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

水深は膝下になると途端に強く感じるようになる
水の作画は『くまの子ジャッキー』『ニルスのふしぎな旅』『太陽の子エステバン』の岡田敏靖さんが心の中の師匠
非常にアニメーションの上手い人で若手アニメーターが手本にするにもちょうどいいと思う
東映動画風ではない描き方で水面に影だけをほどよく配置してその影を動かすことによって水面のローリングを表現する
このやり方は『有頂天家族』でそのまま真似した
『ニルスのふしぎな旅』の着水する鴨のカットの水の表現はいまだに心に残っていて今回はその気分を真似した
手前には飛ばさず左右に広がって散るだけだが非常に感じが出ていて充分表現として成立していると思う
本当であれば着水のしぶきは3次元的にとらえて描くべきだが今回はそこまでする必要はないと判断した
岡田さんや小田部さんの水の表現は大塚さんや宮崎さんに比べるとナチュラルで写実的で実感が出ている

19 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:38:33.728 ID:fYfdsnEd0.net
東映長編が作画の根底にあるのが嬉しい
やっぱアニメーター目指す人は良質なフルアニメーション見るべき

20 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:44:31.060 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

逃げ惑う村人たちのモブの詳細はコンテには指示はなかったが
Cセルに恋人たちを描きDセルに母と娘を描きEセルにあざとく驚く少女の演技を描いた
別セルで描くので演技のポイントが重なって見えないということがないよう注意した
若手アニメーターはこういう時に頑張りすぎるのだが「見えてねーじゃん」ということがよくある
他のアニメーターがモブの雑踏を描く時にカメラ目線のキャラがいたり表情が読み取れる状態で止めにしたりするのをよく見るがこれは非常に良くない
雑踏のモブは意図的に目線を外したり顔を下に向けて伏し目がちにする等の工夫が必要
関係ないキャラと観客の目が合わないようにしなければならない
雑踏の中で待ち合わせをしていた恋人同士が出会って喜び合うようなモブキャラを描くアニメーターがいるがそういうものを描いてはいけない
モブなのに劇的な瞬間を描いても普通そこは切られてしまう
15年前の自分であればあざとく驚く少女の演技は描かなかっただろうが今回は描いた
坂になったところでタタラを踏んだり母親に追いついた少女がコケそうになる演技を描いたが体験や観察によってそういう引き出しを作っておくことが大事

21 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:48:54.628 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

デザイン的なフォルムの髪型の場合はついそのデザインを維持することにとらわれがちだがいかにそこを崩すかを考える
髪の毛は何万本もある繊維の集合体であるという認識は持ちつつ
デザインを反映して崩した動きも盛り込む

22 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:49:34.491 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

人体を描いてから服を着せるという描き方はせずアウトラインの印象だけで描く
理屈通りにやると人形に服を着せたようになってつまらない絵になる
服のアウトラインから中に人体が入っていることが認識できない絵でも意外に大丈夫
実写をコマ送りすると作監に直されそうなデッサンの狂った画が普通にある
起伏がある道での走りの作画はフレーム内でキャラの位置が一定にならないようにローリングさせたり画面の方をローリングさせたりといったカメラワークの工夫も必要

23 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:50:33.521 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

髪の長いキャラの走りでは髪を後ろにたなびかせるくらいに残して描くアニメーターがよくいるが実際はそうはならない
髪の毛は意外と重いのでほつれ毛でもない限りは体のそばで弾む
金髪と黒髪では重さが違うかもしれないがそこは研究できなかった

24 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:51:13.326 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

縦歩きでは左右の揺れを付けないと顔の位置がセンターからズレないまま正面に歩いてくることになり見ていて窮屈だし中割りの際に動画マンがツライいことになる
頭身の高いキャラほど左右に大きく揺れる
普通はΛ型に揺らして8の字っぽく見せるが自分はV型に揺らす
人間は体重が完全に乗ったいちばん高いところで傾くのでV型の方が正解に近いはず
従来通りのΛ型の揺らし方は違うと思うが自分のやり方が一般化するかどうかは分からない
『スカイクロラ』では斜め歩きでも左右の揺れを意識して歩かせた
軌道の基準は主に頭の位置を決めてそれ以外のパーツも別々に動かないように充分注意して描く
『スカイクロラ』のキャラは頭がつるんとしていて頭頂部にポイントが打てなかったので軌道の基準は耳でとった
耳を基準に上下動の軌道を描いてゲージをコントロールして左右に揺らせた
横向きの場合は鼻などポイントにしやすいところを基準とする
はっきりした分け目やアホ毛でもない限りは髪の毛の一部はポイントにしづらい

25 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:53:14.238 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

同時に敬礼する二人の兵士のタイミングは若干ズラしたほうがよく
3コマ作画の場合は1枚ズラすだけではっきりズレたように見える
これが三人だとさらにバラけた感じになる

26 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:57:28.786 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

コンテでは逃げる少女の奥で竜が激しくインして壁に激突し壁が破壊されるとなっていたのを自分の判断で変更
インはやめにして激突もさせず逃げる少女の奥で竜がゆっくりと起き上がるのを見せるほうが緊迫感が増すと判断した
竜が少女に追いつくのを回避するために竜の左前足を石柱につっかえさせるという演技を考えた
最初のリピート部分は4歩でワンサイクルになっている
逃げる少女の左手と右手の振りを変えている
描き送りは時間的に不可能と判断し4歩ワンサイクルであればリピートに見えないと判断した
『未来少年コナン』でラナがフライングマシンに追いかけられる時の走りで2歩違うパターンを入れることで単純なリピートにならないように工夫したカットがあって自分の中では劇的に印象に残っている

27 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 14:59:14.605 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

アニメーションではワザとらしくそこばっかり一生懸命ネチネチ描いた感じになると観ていて違和感が出てしまうのでいかにさりげなく描くかが大事
馬の動きは若い頃は理屈通りに描かねばと思い込み過ぎてがんじがらめになっていたが今は資料を見ずに想像力だけで気楽に描くようにしている
実際の馬を見ると重量感があってゆったりと重みのある動きをしているのが分かる
馬上のキャラの弾む動きにも注意したが実際に乗馬している人の上下動の動きは前後や左右にゆするような動きもあり何ともいえない変な動きをしてる
馬は大きくは肩と腰が上下動するが人が乗るのはその中間地点なので肩と腰どちらの影響をより強く受けるのかという問題がある
動物は走るときには頭はあまり動かさず肩と腰が動きジョイント部分である背骨はあまり動かない
馬の肩と腰の上下動はワンサイクルの中では同じ上下動ではなく半テンポ分ズレる
人間は馬の上で遅れて跳ねるイメージ
このカットでは二人が乗っているのでその二人の上下動もズラす必要がありこれをやるには全原画的に描くしかなかった

28 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:09:45.095 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

絵コンテではカットを細かく割り過ぎていたので自分の判断で2カット分を欠番とし内容も見やすいように大幅に変更した
馬がコケるカットは初めてだったので以前観た『ワーテルロー』という映画を思い出して描いた
少女が無様に馬から落ちてつんのめるカットはコンテからの大きな変更点だが結構気に入っている
速い足取りのキャラを描くときには布がいかに遅れるかを描くとズボンのたるみも表現できズボンがきれいに付いてこない感じも表現できる
速い足取りの時の上下動は足取りの全部に細かい上下動を付けると振動したようになってしまうので体を浮かせた時に足だけをパタパタさせたりしてそこの塩梅に気を付けた

29 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:11:22.308 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

馬上の剣士が敵兵を切るカットでは兜の上からでは切れないと考え兜と鎧の隙間の首が見えているところを上から刺して殺した
こうすることで兵士の運動神経の良さや能力の高さを表現できると考えた
本当は「こんなに血ぃ出ねーだろ」と思ったがそこはアニメ的な嘘とした
このカットも絵コンテからは大胆にアレンジして馬が手前から走り込んでくる動きを追加した
馬は意外に大きく近くで撮ると手前にある馬の顔は相当大きくなるのでそのパース感は気を付けた

30 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:12:49.636 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

描き送りよりも丁寧なリピート作画の方が効果的な場合も多い
若手アニメーターにはカット尺分頑張って全作画する人もいるが
個々の動きがぞんざいになっていて丁寧さが足りないことがよくある
複数のキャラでもそれぞれタイミングをズラせばリピートには見えない
単純なリピートでも2コマベタを一部3コマにする等のシート操作によって自然に見せることができる
短い尺の中でもキャラクターの意志を考えて演技をさせることに注意している

31 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:13:42.101 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

馬がターンするカットは実際にはあり得ない動きを描いた
本当であればいったん止まらなければ回り込めないはずだが先行して描いた竜の足の動きに合わせるためにアニメ的な嘘をついた
馬から降りて走り出すキャラの動きは厚手のマントと装備の重さを考えて着地の際に沈み込ませ低い姿勢のまま走らせた
他のアニメーターがよくやるような溜めるところはじっくり溜めて速いところはうんと速くするというメリハリを付け過ぎたパキパキした動きは噓くさく見えるので溜めすぎないように気を付けた
馬が止まったときに脚をトコトコさせつつ首をヒヒヒーンと振る動きはこだわった
最近のアニメーターを見ていて気になるのはキャラが走ってきて止まる時にピタッと止まってから足の位置を変えずに揺り戻しで体勢戻すという動きをさせているがそんな動きをする人間は実際には見たことがない
自分は人間も馬もピタっと止まってしまわないようにしている
キャラが立っている状態から走り出すときにはいったん低く下がり走り出してしばらくは態勢が低い状態が続く
普通は走り出しは立った状態からクッションの絵があって次のキックの絵になってピョコンとなるがこれは間違っているといつも感じる

32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:17:59.288 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

竜の飛翔はカメラを近づけて撮りたいというのは冒頭のカットでも説明した通り望遠で撮った客観的なカットでは臨場感が得られないと考えたから
これは観客がその場に居合わせてほしいという考えから来ている
自分が空中に浮いてカメラを持って竜のそばで寄り添って撮影することで観客にもキャラクターたちと同時に体験をしてもらうことができる
だがこのカットでは自分の体感で考えると竜の振り下ろす翼がカメラにぶつかってしまいやむなく望遠風に描かざるを得なかったがそれでも4〜5メートルの位置で撮った
こんなことまで考えて描くのは自分だけではないか
絵コンテからの変更点としてはカーブを描きながら飛ぶ竜の前方にカメラが回り込むという複雑なカメラワークを加えた
竜が角度を変えて飛ぶのに合わせて朝日の位置との関係も変化するのでそれに合わせて影の付け方を変えていった
影の面積を大きく変えることでちょっとした角度の違いも表現できる
わずかな傾きの違いで影の落ち方は劇的に変わる
アウトラインを変化させなくても光源との関係性を考えて影面積を変えることで「ちょっと奥に行ったな」ということが表現できる
上手いアニメーターはこういったことをみんなナチュラルにやっている
落ち影であるシャドウと物の暗い部分であるシェードの描きわけも重要でおっぱいを描く時におっぱいの丸みにシェードを付けるのかおっぱいの下にシャドウを付けるのか両方やるのかという問題がある
腕を組んだ時もそうだが両方やると立体感が潰れてしまうことがある
理屈だけでやると全カゲのようになってしまうのでどうすれば必要なことが表現できるのかを考えて2種類の影を上手く使い分けてやっている
人よりも多く考えることによってかなり臨場感やリアリティが増すので時間がない時でもぞんざいにやらずに丁寧に考えるようにしている
『天空の城ラピュタ』のシータ救出シーンも本当であればあのスピードではシータがパズーに激突して双方死ぬはずだがアニメーションの気持ちよさや嘘や観客の願望を優先させている
この作品でもそれと同様に考え激突死することなく竜に乗ったと考えた

33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:25:47.649 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之コメンタリー気になったとこのメモ

走るキャラとカメラを並走させたかったから付けPANじゃなくてフォローにしキャラがカメラを追い越してからは並走しつつPANで見送った
普通こういう場合は付けPANにしがちだが観客の視点とカメラの動きを同調させてキャラと一緒に観客も一緒に走ってる気分でこの作品に入り込んでほしかった 
フォローの時の雲の速い流れはアニメ的な嘘でそのあとのPANの時の雲の速さとごちゃまぜにしたハイブリッドかつご都合主義的な手法
観客に気付かれないように欲しいビジュアルを作っていくことが大事
沖浦啓之であれば何が何でも理論的に整合性を取ろうとするが自分は都合よく嘘をつきたい
沖浦は理屈に合わないことをやりたくない人間なのでこのカットを沖浦が描けばスタートのフォローは遅くするはずだが自分は疾走感が欲しかったから速いスピードで雲を引いた
理屈最優先でない方がむしろいいと思っているしほどよく理論は裏打ちとして欲しいがそこに固執して結果的に欲しい画面から遠ざかるのは良くない
しかし理論的バックボーンが何もないと70年代的アニメに逆戻りしてしまうが金田さんや今石君のように力があればそれもよいがこの作品ではそれはない(つづく)

34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/11/17(日) 15:28:12.139 ID:QEAZq/3n0.net
井上俊之のコメンタリー動画
https://www.youtube.com/user/paworks2000/videos

総レス数 34
26 KB
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★